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日本におけるオブザーバビリティの動向:Grafana Labsの最新調査から得られたインサイト

日本におけるオブザーバビリティの動向:Grafana Labsの最新調査から得られたインサイト

2025-06-13 1 min

Grafana Labsが最近実施したオブザーバビリティに関するマイクロ調査の分析によると、日本の組織では、コストの管理と複雑さの軽減に重点が置かれており、今まさに導入を本格化させる準備が整いつつあるようです。

オブザーバビリティは日本ではまだ発展途上の分野であり、Grafana Labsが 年次オブザーバビリティ調査の日本語版を実施したのは今回が初めてです。本調査は、日本の組織におけるオブザーバビリティの導入状況をより深く理解し、その知見を 日本国内で拡大し続けるGrafanaコミュニティと共有するために実施されたもので、日本におけるオブザーバビリティの現状について興味深い知見が明らかになりました。

本記事では、ツール選定に関する傾向、オープンソースやAIの重要性、市場の成熟度といった調査結果のハイライトを紹介します。もし、貴社のオブザーバビリティの取り組みが国内外と比較してどうか気になる場合は、本記事で紹介する統計データの多くを可視化した インタラクティブなGrafana���ッシュボード�������ご覧ください。

コストと使いやすさがツール選定の決め手に

新しいオブザーバビリティツールを選定する際、82%の回答者が「コスト」を最重要の評価基準の一つとして挙げました。この数値は、アジア(72%)や全世界(74%)の平均よりも高く、日本では特に予算に対する意識が強いことがわかります。

当然ながら、「コスト」はオブザーバビリティに対する最大の懸念事項でもあり(48%)、続いて「予算が立てづらい・コストが予測しにくい」という回答が38%にのぼりました。日本の回答者はこれら両方の懸念について、アジアや全世界の回答者よりも高い傾向を示しました。

Three charts showing the most important selection criteria for Japan, Asia, and the world

同時に、「使いやすさ」を重視する声も大きく、69%の回答者がこれを重要な選定基準としています(アジアは53%、全世界では57%)。また、シグナルとノイズの比率(34%)や、ツールの導入・運用に伴う複雑さ・負荷(33%)への懸念も、他地域より高く見られました(地域平均は30%、31%)。

※世界全体では「ノイズ」や「複雑さ」に対する懸念はさらに高く(それぞれ38%、39%)、これは技術的負債の深さを示している可能性があります。詳細は記事後半をご覧ください。

OpenTelemetryへの関心が高まっている

日本におけるオブザーバビリティ導入では、��ープンソースが一定の役割を担っていますが、世界の他地域ほどの割合ではありません。回答者の66%がオープンソースライセンスを使用している(「オープンソースのみ」「ほぼオープンソース」「商用との併用」)と回答しており、アジア(71%)、全世界(76%)を下回る結果です。

新しいツール選定時に「オープンソース技術を重視する」と答えた割合も、日本は34%で、全世界(41%)より低く、アジア(30%)より高いという位置にあります。

Two charts showing levels of investment in Prometheus and OpenTelemetry

一方で、テレメトリの収集・処理・転送の事実上の標準になりつつある OpenTelemetryについては、日本の組織も積極的な姿勢を見せています。回答者の75%が何らかの形でOpenTelemetryを利用中(「調査中」「PoC中」「本番利用中」「広範囲に利用中」「専用利用中」)と回答しました。これはアジア(81%)や全世界(79%)よりやや低いものの、「調査中」と回答した割合は日本(32%)がアジア(19%)、全世界(18%)より大幅に高く、今後の成長の余地があることを示唆しています。

Prometheusも日本で高い人気を誇り、80%が何らかの形で利用中。本番利用(「本番」「広範囲」「専用」)の割合は50%に達し、OpenTelemetryの本番利用率(22%)を大きく上回っています。ただし、全体的な利用率ではアジア・全世界よりやや低い傾向です。

オブザーバビリティ導入はまだ初期段階 — それがむしろ強みに?

日本の回答者は、他地域と比べて導入しているオブザーバビリティ技術の数が少ない傾向があります。日本では3つ以下の技術を使用している組織が52%と、アジア(41%)や全世界(32%)よりも高い水準です。

A chart showing the number of technologies currently in use, and a second chart showing the number of data sources configured in Grafana

また、より高度な運用で使われるトレースやプロファイリングの導入率も低めです。

Adoption of metrics, logs, traces, and profiles in Japan, Asia, and the world

さらに、最も成熟度が高くスケーラブルとされるアプローチ(中央チームがオブザーバビリティプラットフォームを運用し、ベストプラクティスを共有しつつ、各サービスの個別運用は行わない)を採用していると回答した割合も日本では28%と、アジア(39%)、全世界(38%)より低い結果でした。

しかしながら、慎重なアプローチこそが今後の展開にとって有利に働く可能性もあります。たとえば、「経営層に価値を理解してもらう」ことへの懸念(17%)や、「社内への導入定着」への懸念(18%)は他地域よりも低く、導入推進の障壁が少ないと考えられます。

また、使用ツールやデータソースが少ない分、技術的負債も少なく、ツール選定において「他ツールとの連携性」を重視する割合も20%と、アジア(24%)、全世界(46%)より低くなっています。「社内の知識や導入実績」への不安も14%にとどまり、こちらもアジア(29%)・全世界(31%)より大幅に低くなっています。

AIに対する期待と慎重さ

オブザーバビリティやテクノロジーの進化において、AIは避けて通れない話題です。今回の調査では、AI/ML機能への「願望リスト」として最も多く選ばれたのは、52%が回答した「通常パターンから逸脱したメトリクスを検出するトレーニングベースのアラート」でした。次点は、「未使用/低使用のリソースやテレメトリの削減」(44%)でした。

Percentages showing opinions on which areas of observability would benefit hte most from AI

※日本語版の調査では複数選択可でしたが、グローバル版は1つのみの選択形式のため、単純比較はできません。

一方、日本市場では他地域よりもAI機能に対して慎重な姿勢が見られます。新しいオブザーバビリティツール選定において「AI機能を重視する」と回答したのはわずか8%で、アジア(28%)や全世界(19%)と比べて低い結果でした。

調査概要

本調査は、2024年2月に東京で開催された「ObservabilityCON on the Road」にて実施されました。計108名が参加し、以下のような多様なバックグラウンドが見られました。

  • 職種:個人貢献者から経営層まで10種類以上。SRE(27%)と開発者(28%)が最多。

  • 業界:15の業界から参加があり、最多はソフトウェア・テクノロジー(39%)。

  • 企業規模:全規模の企業から回答があり、最多は従業員101~500名(27%)、次いで5,000名以上(24%)。

なお、同様の設問を含むGrafana Labsのグローバル年次調査も実施され、1,255名の業界関係者から回答がありました(うちアジアからの回答は338名)。詳細は メインレポートインタラクティブダッシュボード分析記事をご参照ください。